ステマ?

ステマ(ステルス・マーケティング)。番組と見せかけた広告のことである。

6月5日の日経新聞に気になる記事が出ていた。

「ドラマと広告一体化/フジテレビ、CM離れ防ぐ」だ。

それによれば、フジが電通と組み、6月20日夜、CMのストーリーを本編に組み込んだドラマ「名探偵コジン」を放映するという(もう終わっているが)。

 

「アドフュージョンという呼ぶ仕組みで、ドラマの監督や脚本家がCM作りに関わる。

スポンサーが宣伝したい商品を番組に登場させ、視聴者に認知して貰いやすくする」とある。

「CM部分では画面の上部に『CM中です』と明示」するとの記載もあるが、だから、ステマではないとは言えないだろう。

 

電通が発表したプレスリリースは、「CMが主人公の性格や特徴の一端を除かせる役割を果たしたり事件の謎を解く鍵になったり」するのが「見所」としている。

CMを見ないと理解できないドラマなら、それは番組全体が広告といえるだろう。

 

プレスリリースには「今後も当社は、アドフュージョンを『ドラマ+CM』に止まらず、バラエティー、ドラマ、スポーツ等の垣根を越えたところで活用する手法を検討」ともある。

 

テレビ全体がCM化したときに何がおきるだろう。

 

権力が国民を支配する一番有効・巧妙な手法は、権力が意図する政策や規則を国民自身が自分の判断で選択することである。

その一番手っ取り早い方法は、マスメディアを支配することであり、安倍首相は、そのために様々なアメとムチを使い分けてメディア支配に腐心している。

そして、安保法制の際に、岸井成格、古館伊知郞両氏をコメンテーターから追放し、テレビ局には「公正な報道を」との要請文を送って、ニュース番組から「町の声」を消滅させた。

今、歯に衣着せず政権批判をする番組やコメンテーターは殆どいない状態である。

 

これで、番組が大資本に買い占められるならどうなるか。

改憲発議がなされた場合、大資本はこぞって巨額の広告費を提供するだろう。アメリカの軍需産業に至っては、大統領選以上の資金を改憲のためにつぎ込むことは目に見えている。

9条がある今でさえ、毎年巨額の米国製兵器を購入しているのだから(例えば、今話題に上っているイージス・アショアは、1基1000億円である)。

 

あらゆるテレビ番組が、巧妙に、スマートに国民自身が自らの意思で改憲賛成の判断をするように放映される。(決して、あからさまに「みんなで改憲に賛成しよう」等と呼びかけたりしない。)

ステマは、民主主義、国民主権さえ侵しかねない危険な要素を持っている。

「このスポンサー、番組の中でさりげなく広告するところがスマートだよね」とは言えない。

電通を使いこなす権力は、なかなか巧妙なのである。

 

ステマを許さず、主権者・国民の正しい判断の担保である報道の自由、放送の権力からの独立を守ることが、今国民に求められているのではないだろうか。

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武田 哲幸

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